総合危機管理学会(SIMRIC)通信 No.1 2018/03/11

このたび、学会員向けに、総合危機管理学会(SIMRIC)通信というニュースレターを発刊致します。学会からのお知らせをはじめ、総合危機管理に係わる、会員の方々のエッセイや視点の紹介、時宜を得た時事的なトピックスから会員の著作紹介や会員動向、研究部会たちあげ等々、学会員の皆様に資する内容を定期的にお届けする予定です。是非ご活用および積極的な投稿等をお願い致します。(常務委員会)
◇コンテンツ◇
1 【学会からのおしらせ】
2 【視点】〜特集 「3.11東日本大震災から7年経過にあたって」
3 【学会員による著作などの紹介】
4 【危機管理にかかわる他学会、他組織での関連イベント・行事等】

1 【学会からのお知らせ】


◆総合危機管理学会 第3回学術集会及び総会のご案内◆
大会テーマ:経済社会の技術革新と危機管理
会 期 :平成30年5月27日(日)
会 場 :東京理科大学 神楽坂キャンパス(〒162-0825 東京都新宿区神楽坂1丁目3)
参加費 :会員 3,000円 非会員 5,000円 学生 無料(※参加費等のお支払いは、学術集会当日受付にてお願い申し上げます。)
懇親会費: 5,000円
○事前参加申込締切:5月18日(金) 発表申込締切:3月31日(土)
参加を希望されるかたは、学会ホームページのフォームより参加申込をお願いします。
(事前参加申込を頂いた方には、要旨集(PDF)を会期前にE-mailで送付します。)
詳細・お申込は、下記をご覧ください。
http://simric.jp/conference
<第3回学術集会 大会実行委員長より>
実行委員長: 倉敷芸術科学大学 坂本尚史
大会テーマ: 経済社会の技術革新と危機管理
ICT技術をはじめとする近年の技術革新はめざましいものが有り、それは理工系分野だけではなく,これまでは無縁と言えるような多くの分野に広がっている。例えば、経済分野においては、Fintechの発展とともに、インターネットバンキングの普及や仮
想通貨の発行などが話題となっている。特に、仮想通貨に関しては
1,000種類を超える多くの“通貨”が流通していると言われている。仮想通貨は規制されていないデジタル通貨の一種で有り、仮想交換業者(取引所)を通じて取引が行われ、投機の対象ともなっている。一方で、セキュリティー上の問題点が指摘され、不正な取引による事件も起きている。さらに、セキュリティーのみならず急激な価格変動、税制など多くのリスクや問題点も指摘され、今後は様々な法的規制も導入されてくるものと思われる。
第3回学術集会では、大会テーマとして経済分野に代表される技術革新のそれに伴う危機管理・リスク管理上の問題点に焦点を当てて話題提供を行い、会員の皆様からのご意見を伺う場とすることとした。
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◆学会誌 No.2 発刊について
本学会の機関紙「総合危機管理」 No.2 は、論文査読と編集を終え、3月11日頃に学会HPにアップされる予定です。
http://simric.jp/journal

2 【視点】特集 「3.11東日本大震災から7年経過にあたって」

「この時期だからこそ聴覚障がい者へ目を向けて欲しい」
千葉科学大学 危機管理学部 木村 栄宏

3月9日から冬季パラリンピックが始まり、3月11日には東日本大震災から7年が過ぎる。私は大学で危機管理やリスクマネジメントの教育や研究に携わってきたが、この両者に関連しながら社会で見落とされているものがあると感じている。それは、聴覚障がい者の存在と彼らへの理解と支援である。
東日本大震災において深刻な被害を受けた沿岸部27市町村の集計によれば,総人口に対する全体の死亡率は1.03%であったのに対し,障がい者の死亡率は2.06%,そのうち聴覚障がい者は2.00%であった(NHK)。パラリンピックについては、社会の意識は以前と比べ理解が大きく進んだ一方、聴覚障がい者の五輪であるデフリンピックの存在を知っている方は少ないのではないか。海外遠征への支援をはじめとして、パラに比べて参加者への支援の格差は極めて大きい。
視覚障がい者であれば白杖を持つなど、外見で認識できるので周囲も支援しやすいが、聴覚障がい者は、外見は健常者と変わらない。聴覚障がい者との交流やその危機管理支援に関する研究を通じてわかるのは、彼ら自身は普段は不自由さを感じておらず、特別な助けも必要としていないこと、妊婦マークのように体につけて自分の状況を積極的に示すなどは好まないことである。すると、健常者側もどのように聴覚障がい者と普段から関わればよいか迷う。学校ではインクルーシブ教育(障がいのある者と障害のない者
が可能な限り共に学ぶ仕組み)が日本でも進み、災害時対応としては光る警報機や振動やにおいで危険を知らせる仕組み等々、多様な取り組みがなされてきつつある。しかし、一旦緊急時(被災等で避難所にいるときや交通機関乗車利用中に事故等でトラブルに巻き込まれた際など)、とたんに彼らは情報から取り残され、災害時要支援者として命の危機に直結する事態に遭遇する。
ただ、日本には大きな希望がある。それは、諸外国では手話は職業としてプロが行なうが、日本では手話サークルが各地域に存在し、日常的に支援体制が取りやすいことである。もちろん、手話を使用する聴覚障がい者の方の割合は約2割だが、これは手話を必須としない障がい程度の方や、聴覚・視覚併用は聴能を阻害するという考えが長らくあったためだ。共生社会の中で、今は手話を中心とする有効性が見直されている。
一般市民だけでなく、警察官・消防官・救急救命士・看護師・薬剤師等々、様々な職業で手話がわかる人が増えていけば、緊急時にも平時でも聴覚障がい者の方の世界は大きく広がる。ちなみに筆者の勤務大学では、「人を助けたい」という進路を目指した学生たちが手話を学び、将来に備えている。

「健康を支えている人々のために必要な支援は何かを考える」
千葉科学大学 看護学部 城戸口親史

この時期になると、東日本大震災から何年と、耳にすることが多くなります。この東日本大震災のように国内の広範囲にわたる震災の影響は、まだまだ続いている中、周りを見渡すと震災前と何ら変わらない風景も見えることもあれば、ふと今ある風景は震災後の影響がまだ続いていると実感することもあるのではないでしょうか。通勤途中に津波の被害を受け、その後更地になり、歯抜けのようになっている場所があり、ここに住んでいた方々は同じ場所で居を構えていなくてもこの地域に住んでいるのか、少し離れたところに移られたのだろうかと考えることがあります。
「ふくしま復興のあゆみ<第21判>(平成29年11月20日)」によれば、災害廃棄物の処理状況も96.3%と着実に成果が見られています。また、福島県内除染地域における除染実施状況でも住宅ではほぼ100%の達成状況まで来ていますし、復興公営住宅整備も進んでいます。しかし、県内外の避難者数は、5万人を超えており、震災後の3分の1まで減少していますが、なかなか地元に戻れない方が多い現状が示されています。調査時期は異なりますが、平成27年度県民健康調査「心の健康度・生活習慣に関する調査」(福島県立医科大学)によると、家族と離れて生活している方が調査対象者の3分の1、暮らし向きを経済的に見てどう感じるかについては約30%の方が「苦しい」「やや苦しい」と答えていました。このような状況は、今後の健康への影響が懸念されるのではないかと考えます。そして、相談先が「ない」と解答された方は25%強であり、支援が必要な方がまだ潜んでいるのではないでしょうか。もちろん、県、市町村、大学、病院などをはじめ、様々なところで支援が継続されていることも事実です。そして、このように長期化している中で支援を行っている方の疲労が大きいことも忘れ
てはいけないことだといえます。復興が進んでいく中で、生活を送り人々において目に見えて変化が見えにくい健康、そして住民の健康を守り支える人々への支援を改めて考え、支援を行い続けている方に対する次のステップの支援について考える時期に来ているのではないでしょうか。

「ドローンと危機管理」
千葉科学大学 危機管理学部 嶋村 宗正

以下は3.11に臨むにあたって、技術との関わりを持つ一人の門外漢のつぶやきと捉えていただきたい。
大災害発生の初動において、まずは被災地の状況確認が求められるだろう。ついで、被害拡大防止対応、被災者救護や捜索、復旧作業などを検討することになる。
このとき、行政のもつ連絡網によって被災人数、倒壊家屋数など具体的な数値を知りたいところだが、災害の規模が大きくなるほど被害の全貌をおおまかにでも知ることが必要でないだろうか。そのためにはなんといっても映像情報が役立つであろう。百聞は一見にしかず、である。
この映像情報を得る上で、近年注目を浴びているのが、スマホなど個人所有の通信機器を使ったSNSではないだろうか。しかし、個々人の情報で行政が全てを判断することは、情報の偏りの観点で好ましくない。しかも、災害が大きくなるほど通信の輻輳問題があり、通信が困難になる可能性がある。
国土の状況を視覚情報として得る方法に衛星利用がある。我が国でも陸域観測技術衛星だいち2号が運用され、地形の変化を瞬時に観察し解析できる。しかし、タイムリーなデータ収集・解析の面では、現在の運用のままではかなり難しいのではないだろうか。
衛星と同じように航空機による観測は有用である。しかし、国土が狭く、人口が密集している日本においては、特に戦後、航空機の運用が実に厳しく制限されている。そのため、航空機派遣を望む行政の意向にタイムリーにかなえられる状態にはないといってもよい。
近年ドローンが注目を集めている。このドローンの運用にも航空法をはじめ条例などで様々な制約が課せられている。それでも、運用経費の面、小回りがきくこと、GPSを用いた自動飛行モードの可能性など、映像情報を入手するツールとして利用価値はあるものと考えられる。
我が国には市区町村が約1700箇所ある。そのうち面積が100km2未満の行政は約900と半数を占めている。現在のドローンは約50km/hでの飛行が可能であるので、その土地の中心地から東西南北に4機飛ばせば、20分ほどでその土地の全体の概要を入手できる計算になる。
このように、大災害発生初動時に適切な映像情報を入手する一つの手段としてドローンの活用が挙げられる。現在のドローンは、法規や条例による規制のほか、風雨に対する耐候性、飛行可能時間の問題、信頼性の問題など、大きな課題をいくつか抱えている。しかし、技術的課題は時代と共に解決されていくだろう。巨大災害は、いつ何時発生するかも
しれない。将来を見据えて、速やかに被災状況の確認ができる仕組みを考えていかなければならない。

「東日本大震災と環境問題 −3.11から7年にあたっての雑感−」
倉敷芸術科学大学 危機管理学部 坂本尚史

あのとき、研究室にいた私は、それまで経験したことのない強い揺れに襲われた、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)であった。書庫の上に置いていたレターケースがいくつか落ちたが、幸いに大きな被害はなかった。すぐに実験室も覗いてみたが、実験中だった熱天秤が止まった以外には大きな問題はなかった。 地震の直後には、東北地方の太平洋沿岸を中心に大規模な津波が発生し甚大な被害を出した。私の勤務していた大学でも、一部の建物が津波に襲われかなり大きな被害を出した。
この震災では、多くの犠牲者を出したばかりでなく、様々な環境問題が発生した。その一つが大量に発生した“災害がれき”の問題であった。“災害がれき”は集積場に運ばれ分別して野積みにされて一時保管されたが、一部の集積場では自然発火による火災の発生など多くの環境問題を起こした。同様な“災害がれき”は,熊本地震や北九州豪雨などその後の自然災害でも発生し、各自治体ではその処理に苦労しており、近い将来発生が予想される南海トラフ地震に向けて対策を講じておく必要があると思われる。
東日本大震災で生じた“災害がれき”は焼却等による処理が進み、幸いにして現在ではほぼすべての処理が終わっている。一方、同時に発生した原子力発電所の事故による汚染の除去に伴って放射性物質を含む土壌や植物など大量の “除染廃棄物”が発生した。“除染廃棄物”は,まず仮置場で保管・管理され、現在は中間貯蔵施設の建設と搬入が行われているが、いまだに順調に進んでいるとは言えそうもない。さらに,最終処分に向けては減容・再生利用に技術開発と先行・実証研究が行われている段階であり、今後速やかな実事業の展開が求められている。

3 【学会員による著作などの紹介】

・「震度7の生存確率」中西宏之・佐藤和彦 幻冬舎2016年12月発行
https://www.amazon.co.jp/dp/4344030508


4 【危機管理にかかわる他学会、他組織での関連イベント・行事等】

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シンポジウム「南海トラフ巨大地震の広域被災に備える減災活動の現状と将来」
日時: 2018 年3 月19 日(月)13:00〜17:00
場所: 建築会館ホール(東京都港区芝5-26-30)
http://wgww.jaee.gr.jp/jp/2018/02/19/9581/
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日本危機管理学会 第27回年次大会
日 程 : 2018年5月12日(土)
会 場 : 筑波大学 東京キャンパス文京校舎
統一論題:「日中平和友好条約締結40周年を巡って」
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第15回日本地震工学シンポジウム
日時:2018年12月6日(木)〜8日(土)
場所:仙台国際センター(宮城県仙台市青葉区))
http://www.15jees.jp/
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◆会員に周知や紹介したいイベント・行事等がございましたら、行事名、主催、日時、場所詳細リンク先 等を、総合危機管理学会事務局(info@simric.jp)までお送り下さい。
※ご住所や連絡先,ご所属や職名,書類等送付先の変更・訂正は,郵便,メール,またはFaxで下記の学会事務局までご連絡ください。
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総合危機管理学会 事務局
千葉県銚子市潮見町3 千葉科学大学危機管理学部内
email info@simric.jp, tel 0479-30-4636, fax 0479-30-4750
http://simric.jp/