総合危機管理学会(SIMRIC)通信 No.13   2021/07/01

本号では、先日開催いたしました学術集会・大会を振り返り、会員の方々からのご意見や感想を巻頭特集として掲載、また、危機管理に関連するテーマでの会員のコラムを載せております。

SIMRiC通信では、危機管理に絡む多様なエッセイやコラムを、会員の皆様から募集しております。論文にする前の研究ノート的な内容でもかまいません。是非、事務局まで、気楽にご投稿いただければと存じます。是非、多数の方のご参加をお待ちしております。

◇コンテンツ◇
1 【巻頭特集】総合危機管理学会 第5回学術集会を振り返る
   ・webセミナー「総合危機管理学会 第5回学術集会」に参加して 佐藤 義一(会員) 
   ・総合危機管理学会 第5回学術大会に参加して 五十嵐 仁(会員)
   ・第5回総合危機管理学会学術集会を終えて 三村 邦裕(本学会事務局長)
2.【総合危機管理学会 コラム】
   ・「ダイバーシティ(多様性)と危機管理についての一考」   木村 栄宏(会員)
3.【総合危機管理学会からのおしらせ】
   ・ 次回(第6回)学術集会及び総会について)
  ・ 学術論文投稿のお願い
4 【関連学会・関連イベント情報】

1.【巻頭特集】総合危機管理学会 第5回学術集会を振り返る

Web セミナー「総合危機管理学会 第5回学術集会」に参加して

佐藤義一(学会員)

EY Japan 行政書士法人 Associate Partner

千葉科学大学危機管理学部非常勤講師(出入国管理政策担当)

本年の総合危機管理学会学術集会は、「『COVID-19への視座』」総合危機管理学会が果たす役割」をテーマとして開催された。世界的に猛威を振るっている新型コロナウィルス感染症に対し、危機管理学がどのような貢献ができるかを目的とされている。

秋富慎司部長(医療社団法人医鳳会医療機器管理部長)の基調講演に続き、秋富慎司部長、木村栄宏教授(千葉科学大学危機管理学部教授)、西尾晋部長(株式会社エス・ピー・ネットワーク総合研究部長)によるパネルディスカッションが開催された。

ご承知のように2019年末に中国武漢で確認された新型コロナウィルス感染症は世界中に急拡大した結果、多くの人々が犠牲になり、感染の抑制を目的とした渡航制限や外出制限等により、世界経済は急速に減速し、前例のない経済危機となっている。

秋富慎司部長、木村栄宏教授、西尾晋部長のパネルディスカッションは、新型コロナウィルスワクチン購入・確保に関するプロセスなど医学的視点を中心としてなされたが、そこで、議論され、指摘されたものは、危機管理学に携わる者にとって、興味深く、意味のある内容であった。

私がこれらの議論を通じて感じたことは、情報の集中・分析機構の不在、一元的な意思決定機構の不在と日本の危機管理システムの不在ということであり、厚生労働省を中心とする政治・行政機構全般にわたる機能不全の確認であった。その意味で逆説的ではあるが、今回の総合危機管理学会学術集会は極めて意義あるものであった。是非ともこの成果を広報し日本社会に広く伝えなければならないと思う。

新型コロナウィルス感染症は、発生後1年半経過した現在も世界中で猛威を振るっている。これから3年経過しても完全に抑え込めるかも不明である。新型コロナウィルス感染症にかかる危機は、その時間的長さ、波及する範囲の大きさ、様々な側面で地球的規模の領域に及ぶものであり、危機管理学が発展する絶好の機会を提供したものと確信する。                       以上

総合危機管理学科第5回学術大会に参加して

五十嵐 仁(学会員)

千葉科学大学危機管理学部専任講師

危機管理を大きく2つに単純に分ければ(諸論あり)、リスクマネジメントとクライシスマネジメントになるかと考えております。その中で、今回の秋富先生のご講演は、クライシスマネジメントに立脚した論点を現行の国難ともいえる新型コロナウイルス感染拡大への緊急対応に関し、医療危機管理政策に特化したものの日本のクライシスマネジメントで分野横断的に抱える課題をあぶり出したものであったと感じ、大変勉強になった次第です。日本は、諸外国に比べリスクマネジメント部門は極めて優秀でこれまでの研究に基づいたさまざまな事前対策と英知の応用を通じ、安全が高いレベルで保たれている社会が存在していると感じております。例えば、新幹線は、ほぼ毎日定刻に東京駅を出発し、そして、定刻に博多駅に何事もなく到着するといった極めて高い安全が確保されています。一方で、秋富先生の今般の新型コロナウイルス感染への緊急的対処につまりクライシスマネジメントに立脚した検証結果では、日本はかなり苦戦していることが理解できます。学術大会が行われたころの報道では、「日本のワクチン接種率は世界で129位!・日本はOECD加盟国で最下位」といった点が指摘されていました。これらの報道だけで判断することは危険でありますが、少なくとも1995年の阪神淡路大震災で発生した諸課題が、2019年の各種気象関連災害においても同様な課題が再発した事実もあるようです。教訓が生かされないといった日本のクライシスマネジメントにおける課題がまだたくさん残存しているように思えてなりません。秋富先生や各先生方のお話しからも共通に、日本は災害発生後の緊急対処は不得意なのではないかと示唆されたように感じました。

危機管理は、先述の通りリスクマネジメントとクライシスの両領域の同等なる強化と柔軟でありながらも体系的な融合と連携が重要と学術大会を経て再認識した次第です。総合危機管理学会では、「総合」つまり両分野を同等に重要と考えることが可能な学会であり、今後、日本は不得意?とするクライシスマネジメントのさらなる研究と学際的な問いから具体的な実践策や社会実装へとつなげる場として貢献できると感じた次第です。今般の、講演そして各先生方の論点は、大変刺激的であり学ぶことが多々ございました。参加の機会を頂き、心から感謝申し上げます。    以上

第5回総合危機管理学会学術集会を終えて

三村 邦裕(本学会 事務局長) 千葉科学大学 危機管理学部 教授

 令和3年5月22日に総合危機管理学会学術集会が開催され、基調講演ならびにパネルディスカッションが行われました。例年、東京理科大学神楽坂校舎を借用して学術集会を開催していましたが、本学会も他学会同様、新型コロナ感染症(COVID-19)の影響を受け、昨年は余儀なく中止させられ、さらに本年は「緊急事態宣言」下であったため、ZOOMウェビナーによるオンラインによる開催となり、開催時間も短縮し一般演題発表も行わないという全体的に縮小した学会となりました。

学術集会長は一般財団法人日本総合研究所 調査研究本部 経営研究部長の佐藤和彦氏に担当いただきました。学会のメインテーマは『COVID-19への視座』総合危機管理学会が果たす役割ということで今、まさに直面している危機に対応するためにすべきことを議論したものになり、本学会の重要な役割を示すことができたのではないかと考えられました。基調講演は『新型コロナウイルス感染症と危機管理』と題して医療社団法人医鳳会 医療危機管理部長の秋冨慎司氏に行っていただきました。さらにパネルディスカッションとして『危機管理学は社会システムを守れるのか~アフターコロナへの提言』と題して、秋冨慎司氏、千葉科学大学教授の木村栄宏氏、そして株式会社エス・ピー・ネットワーク総合研究部長の西尾晋氏がそれぞれの立場から専門性に基づいた発表をしていただき、またそこに学術集会長も加わり活発な議論が展開されました。残念なことに参加者からの十分な議論ができず、一方的な配信になってしまいましたが、内容は新規性のある価値のあるそして有意義なものでありました。

 総合危機管理学会は2016年の3月に設立されました。本学会の特徴は、人文・社会、生命科学、理学・工学、教育など様々な分野において、人として最低限身に付けなければならない共通の危機管理とは何かを見いだし、それを学問として構築し、教育に取り入れたり社会に還元することで国民の危機管理に対する意識改革を目指すものです。それぞれの分野における専門性に特化した危機管理を追求そして研究開発する専門性の高い他の学会とは異なり、本学会は独自性のあるユニークな学会といえます。このように様々な分野の専門家が危機管理に関し横断的に議論できる場はほとんどなく、この学会が唯一といって過言ではないと思われます。また本学会の目標の一つに危機に関して正しく、的確な観察力、洞察力そして分析力のある人材を育成することがあります。そのためには論理的な思考や創造的に物事を考えることができる能力、そしてコミュニケーション・スキルや柔軟性のある問題解決能力を持ちリーダーシップのとれる人材の育成が必要となります。このような人材が育成できれば、適材適所において脅威となるリスクを見いだし、それを順位付けし、リスク評価から目標設定そしてリスクに備えるための実行計画を提案でき、社会に貢献できる人材になり得ると考えます。

 本年の学会時に行われた理事会、総会において木曽功学会長より、今後の本学会のあり方について検討する会「将来検討委員会」を立ち上げ、より社会に貢献できる学会となるよう努力することが提言されました。

学会としては創立6年目でまだ研究会レベルではありますが、今後、多くの方々に関心を持っていただき、その結果会員が増加し、さらに学術活動の活発化に繋がることを目指したいと思います。そして社会から求められる魅力的な活動を行うことでこの学会の存在価値を高めていきたいと考えておりますので会員の方々のさらなるご協力をお願い致します。            以上

2.【総合危機管理学会 コラム】

ダイバーシティ(多様性)と危機管理についての一考

                                  木村 栄宏(学会員) 千葉科学大学危機管理学部教授

はじめに

 ダイバーシティーという概念や言葉が日本で一般化してきたのは平成後期である。ダイバーシティは多様化、あるいはダイバーシティ&インクルージョンと呼ばれるように、寛容や包摂、またLGBTQにも関与するなど、広範な視点がある。本稿では、ダイバーシティの概念の浸透の背景には日本社会における「人と組織」の変遷の寄与が大きいと考え、その視点で概観した後に、格差、多様化についてひとつの考えを示してみたい。

1. 平成期における人と組織の関係を変えた契機

 平成時代は阪神淡路大震災や東日本大震災をはじめ災害が多かったという印象を持つ方が多いのではないだろうか。そうした中で日本の金融システムを例にとると、人々への信頼を示すという点からは堅固な体制を示してきた。例えば阪神淡路大震災や東日本大震災の際にも日銀システムが揺らぐことはなく金融不安が生じることはなかった。     

 しかし、平成前期においては民間金融機関ではバブル崩壊後の不良債権処理をはじめ経営が悪化し、いくつかの大手銀行は経営破綻となった。昭和時代の護送船団方式(too big to fail)は通用せず、日本では1997年に金融危機が生じた。

 その1997年、1998年の頃から日本では自殺者の数が年間3万人を超えるようになった。景気サイクルと自殺者数には相関傾向があるが、この年以降、自殺者数は一気に1万人近く増加し3万人台となり、その後のデフレが続く間、その数字で推移した。

 高度経済成長期、昭和から平成にかけては、概ね企業や組織の方向性とその構成員である一人一人の方向性も一致していたと思われる。しかしバブル崩壊から失われた20年の中で企業や組織の方向性も、個々人の方向性もぶれた。

 社会状況、企業や組織の状況は、コミュニケーションの変化、価値観の変容、人材の流動化が進む一方、企業各社の人事戦略も人材ポートフォリオや人材スキルマップに従って育成することが難しくなった。

2. 平成後半からの変容

 自殺者数は政府及びNPOをはじめとする施策と努力等により2012年(平成24年)から3万人を切るようになった。メンタルヘルス予防策の実行やEAP(従業員支援プログラム)の浸透、企業の認識の変化を背景に、弱者を取り巻く社会の考え方が減容した。昭和から平成前期までにおける、企業が組織内の低生産性社員に対する対応は、退職勧奨をセットにしたローテーションの実施だったが、労働力人口の減少、企業の社会的責任の意識向上、1人辞めた時のコストの大きさ(訴訟・賠償費用も含む)の3つの理由により平成後半期ではメンタルや低生産性の社員に対して、復職・復活させて共に生きるという方向に変容した。

 その一方、平成後半からはリスクに対する認識も変化し、格差社会という言葉が定着していった。まさに現代社会はリスクの普遍化とリスクの個人化(強調される自己責任)の時代である(山田昌弘「希望格差社会」)。

3. 格差は定着し、その危機は令和でも変容できないのか

 平成に生じた格差社会を考えるにあたり、ここでは、まず「格差とは何か」から述べる。

「格差社会」の定義は多様だが、例えば「親の社会階層によって子供の将来が決定される社会」「国内の地域格差」「一旦フリーター・非正規社員になるとそこから抜け出せない社会」「格差が拡大して低所得者が増える社会」などがあるだろう。

そうした格差に関する議論には、「結果の平等」(所得などの格差そのもの)と「機会の平等」(=全員参加、非差別)(世代間移動と世代内移動に分かれる)とがある。

 そもそも格差拡大はあるのかについて、例として小泉元首相の論理をみると、次の発言がある。2006年1月国会:「当初は、統計データでは格差拡大はなしとし、その後、「格差が出ることは悪いこととは思っていない」「成功をねたむ風潮や能力のある人を引っ張る風潮は厳に謹んでいかないと社会の発展は無い」「敗者となっても、また勝者になり得るという、そういう機会をつくることが大事だ」

要は、世代内移動の機会があればよいとするものだ。

当時の論調をいくつか下記に示す。

 ・2006年1月第164回国会

「構造改革の進展に伴い、その「影」ともいうべき歪みが、日本社会の足元で広がっている・・・・。それは、「勝ち組・負け組」の言葉に代表される「2極化」「格差の拡大」の問題であります」神崎公明党代表(当時)

・同

「統計データからは格差拡大は確認されない」

(政府の主張:ジニ係数の上昇は見かけ上のもので、実際には社会の高齢化と核家族化の進行による係数の上昇。収入の無い高齢者が増えたり、一緒に住んでいた息子が独立すると年収の少ない世帯が増える、という統計上の問題である、とした)

「格差が出ることは悪いこととは思っていない」「成功をねたむ風潮や能力のある人を引っ張る風潮は厳に慎んでいかないと、社会の発展はない」「敗者となっても、また勝者になり得るという、そういう機会をつくることが大事だ」小泉首相(当時)

・竹中平蔵氏(1999年11月7日付読売新聞インタビュー記事)(1999年当時、格差が広がりつつある日本社会の状況について)「極端な平等社会から「普通の社会」へ変わりつつある」(と評価)「重要なポイントは、速く走れる人に能力どおり走ってもらうことにより、社会全体の利益が高まるということだ」「“機会の平等”を重視すべきであり、結果の不平等に対しては、敗者復活のルールも必要だ。言葉を換えればセーフティネットだ」

では、機会の平等があれば結果の不平等は良いと言えるか。

確かに、機会の不平等はそれ自体が正しくなく、是正すべきであるが、機会の平等が確保されたうえで公正な競争の結果として賃金格差や所得格差が生じるのは当然である、という考え方は納得性がある。問題は。「所得格差」という結果の不平等が、機会の平等の是正を阻害するようになっているのではないか、という点にある。

 視点を変えて、平等と公平という言葉で考えてみよう。

スタディアムの外から内部を除こうとしている幼児、小学生、高校生(それぞれ背の高さが違う)の絵がある。塀が高くて3人とも見えないが、同じ高さのミカン箱に乗ってみた。すると、幼児は見えないまま、小学生は何とか見える、高校生は悠々と見える。

この状況は「平等」(equality)である。しかし格差は生じている。

 一方、3人の背の高さに応じて、最も背の低い幼児にはミカン箱2つ、小学生には1つ、高校生はそのままでもなんとか見れるのでミカン箱無し、とする。この状況は「公平」(equity)である。

 平等、不平等、公平、公正といった言葉の定義が本稿では曖昧かもしれないが、現実の日本は、「失われた20年」と並行して「所得格差という結果の不平等拡大が進みすぎ、

機会の不平等が生じている」状況ではないか。

4. ダイバーシティとは

 ダイバーシティは、LGBTQ、人種差別、障がい、働き方改革、格差など多様な局面で用いられる。分かりやすい企業の人材採用で言えば、日本では当初、新卒・男子中心採用だったのがパート・派遣社員、中途採用、女性の活用が進み、心身障がい者、外国人採用へ拡大したことや、米国では従来より女性雇用、身体障がい者、マイノリティー、高齢者、同性愛者の雇用、移民の雇用、精神疾患者の雇用といったように日本の先を進んでいることが挙げられる。

学校へ行けない子どもたちへの教育コンテンツとしてTV放映されてきた米国「セサミストリート」では、「人は違って当たり前」「見た目も価値観も考え方も多彩」という世界観が教育界に大きな意義を示してきた。その米国ではジャズ・ボーカリストのビリー・ホリディによる「奇妙な果実」で哀しく歌われた人種差別からの克服や、人種の坩堝(メルティング・ポット)及びそこからサラダ・ボウルのように民族固有の文化を尊重しあうという多文化主義への進化、施策としてはアファーマティブ・アクション(Affirmative Action:人種や性別などの社会的被差別者を救済するための積極的差別是正措置。日本ではポジティブ・アクション(positive action)と呼ばれ、男女雇用格差解消への改善措置が中心)が進んだ。

しかし、アメリカの前大統領トランプ政権は逆に人種的多数派に対する「差別」になるとして、大学・公立校に入学選考での人種的少数派優遇指針を廃止するなど、「多様性」と「差別」「格差」の関係を混乱させた。

日本でも、2019年4月、東大入学式で上野千鶴子名誉教授が「性差別は東大でも例外でない」「頑張れば報われた(東大合格)というのは努力の成果ではなく環境のおかげだったことを忘れないでほしい」等とした祝辞が賛辞と反発を読んだが、それを契機に人権擁護のための法的整備の遅れやアファーマティブ・アクションの進展の重要性が指摘されるようになっている。前述のように、1999年元小泉首相の構造改革構想以降、「“機会の平等”を重視すべきであり、“結果の不平等”は敗者復活・セーフティネットで対応」となったものの、現実の日本は、「失われた20年」と並行して「所得格差という結果の不平等拡大が進みすぎ、機会の不平等が生じている」状況とみなされていよう。

有名な経済学者・哲学者のアマルティア・センの示すダイバーシティについての考えは以下と考えられる。

・国の経済成長はもちろん重要であるが、財や収入の多さで社会のゆたかさ、発展度は測定できないし、国民が幸福であるとも限らない。人々の幸福こそが、かけがいのない最大の目的であり、経済発展や効率性、資産や富はその単なる手段にすぎない。

・しかし現実には、この目的と手段が往々にして逆に誤解されている

つまり、アマルティア・センは多様性を肯定しているが、あくまで「多様な人々の達成能力(capability)の開発を進めるために経済発展が必要」であり、「経済発展のために多様な人材活用があるわけではない」としている、これは近時、企業でそのとりくみが進む「ダイバーシティマネジメント」に対する批判ともとらえられよう。

5.危機管理の観点から見たダイバーシティ

危機管理の心構えの一つに、「多様な価値観を認めること」がある。いいかえれば「想像力を持つこと」だ。SNSにより私たちは自分の意見や感情を、自由にただちに世界に発信できるようになったが、一方ではフェイクニュースや改ざん映像等で被害を受けたり、他人を知らないうちに傷つけたりなど、負の側面も目立つ。それを避けるためには、事実関係を認識する際、お互いの立場による認識の違いに留意し、「真実」に着目する必要がある。

思い込みをしないためには、認知の歪み、バイアスの存在を知ることである。危機管理に関するバイアスには、正常性バイアス(自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価してしまう。「ここまでは津波は来ない」)、同調性バイアス(多数派・集団同調バイアス)(迷ったときは周囲などにいる多数の様子を探りながら同じ行動をとってしまい、それが安全と考える。「隣の車両で煙が出ているが皆誰も逃げないしこのままいる方が安全だ」)が有名だが、「確証性バイアス」もある。これは、自分に都合のよい資料や証拠だけ集めてしまうことで、人間は自分の考えが正しいかそうでないかを考える際に、自分の考えが正しいことを示す証拠になりそうなものばかり探してしまい、自分の考えが正しいことを否定するような証拠の情報は頭に入ってこない、あるいは無視してしまうことである(もちろん、特にネットの世界では「フィルターバブル」と「エコーチェンバー」により、強制的に確証バイアスに人は陥りさせられている)。

こうした中、今後のために示唆する考え方は何かというと、インクルージョンである。

元々、ダイバーシティは「ダイバーシティ&インクルージョン」として使われるものだが、インクルージョンの部分が見落ちされがちである。

日本ではこの考えは教育界で早くから導入されている。元となるのが「インクルーシブ教育」であり、2006年12月国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」で示されたものだ。障がいの有無に関わり無く、誰もが望めば各自に合った配慮(合理的配慮)を受けながら通常学級で学べることを目指す。

パラリンピックには聴覚障がい者、精神障がいや発達障がい者の人は出場できない。画一的にとらえるのではなく、確証性バイアスを解き放ち、多様な人が平等・公平に対峙しながら一体化する「インクルージョン社会」を目指すことが、「ダイバーシティ」という言葉・概念の多様性を統合していく鍵ではないかと考える。        以上

3.【総合危機管理学会からのお知らせ】

(1) 総合危機管理学会 第6回学術集会及び総会のご案内

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次回の「総合危機管理学会第6回学術集会及び総会」は、2022年5月下旬に開催予定です。集会大会長は東京理科大学教授の大宮喜文先生で、テーマは「熱中症」がキーワードとなります。今後、詳細が固まり次第、お知らせいたします。
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(学術論文投稿のお願い

学会誌「総合危機管理」では、随時学会員の皆様よりの学術論文の投稿を募集しています。ご投稿いただいた学術論文は査読手続きを得て、掲載が受理されたものより随時「総合危機管理」へと掲載いたします。投稿規定などは学会ホームページ(http://simric.jp/journal/information-authors/)で公開しておりますのでご確認ください。皆様の論文投稿を編集委員一同お待ちしております。

4.【危機管理にかかわる他学会、他組織での関連イベント・行事等】

○地域安全学会東日本大震災連続ワークショップ 2021 in 名取

・主催:地域安全学会

・日程:2021 年 8 月 26 日(木)~27 日(金)

・場所:閖上公民館(名取市)

・開催方式:オンラインの可能性あり

・詳細:http://isss.jp.net/isss-site/wp-content/uploads/2021/04/News_Letter_No.115.pdf

○日本心理学会第85回大会

・主催:日本心理学会

・大会長:境 敦史(明星大学 心理学部)

・日程:2021 年 9 月 1 日(水)~8 日(水)

・開催方式:オンライン開催

・詳細:https://confit.atlas.jp/guide/event/jpa2021/top?lang=ja

○第 40 回日本自然災害学会学術講演会およびオープン・フォーラム

・主催:日本自然災害学会

・日程:2021 年 9 月 10 日(金)~12 日(日)

・場所:徳島大学(徳島市)

・詳細:https://www.jsnds.org/

○第 52 回(2021 年度)日本看護学会学術集会「看護の力で健康な社会を!」

・主催:日本看護協会

・幕張メッセ会場:2021 年 9 月 28 日(火)~29 日(水)※現地開催は中止

・朱鷺メッセ会場:2021 年 11 月 18 日(木)~19 日(金)※現地開催は中止

・詳細:https://www.nurse.or.jp/nursing/education/gakkai/index.html#2021

〇地域安全学会第 49 回(2021 年度)研究発表会(秋季)

・主催:地域安全学会

・日程:2021 年 10 月 30 日(土)~31 日(日)

・場所:静岡県地震防災センター(予定)

・詳細:http://isss.jp.net/isss-site/wp-content/uploads/2021/04/News_Letter_No.115.pdf

〇日本学校保健学会第 67 回学術大会「学校保健,その原点に立ち返る」

・主催:日本学校保健学会

・大会長:大澤 功(愛知学院大学)

・日程:2021 年 11 月 5 日(金)~7 日(日)

・場所:愛知学院大学日進キャンパス(日進市)

・開催方式:ハイブリッド開催(オンライン開催+現地開催【人数制限あり】)

・詳細:http://web.apollon.nta.co.jp/jash67/

○防災推進国民大会ぼうさいこくたい 2021 In 岩手

 「~震災から 10 年~ つながりが創る復興と防災力」

・主催:防災推進国民大会 2021 実行委員会(内閣府・防災推進協議会・防災推進国民会議)

・日程:2021 年 11 月 6 日(土)~7 日(日)

・場所:釜石市民ホール TETTO ほか(釜石市)

・詳細:http://www.bousai.go.jp/tolink/pdf/kokutai2021.pdf

※ご住所や連絡先,ご所属や職名,書類等送付先の変更・訂正は,郵便,メール,または
Faxで下記の学会事務局までご連絡ください。
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