設立の趣旨

総合危機管理学会 設立趣意書

「危機管理」の本質は、起こりうるか、または起こってしまった各種災害に対し、危機的状況にあると の総合的判断を早期に下し、その被害を最小限にとどめるところにあります。しかしながら、専門的知見 が未だ十分といえない企業、自治体、公共団体、学校等においてその対応は、必ずしも的確に実施されて いるとはいえないのが我が国の現状と思われます。特に、2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災では、 複数の重大な想定外の事態が同時多発的に発生し、総合的な危機管理対応が出来ない事態が生じました。 それ以降も、巨大台風の襲来やこれまでの想定を超える局地的な風水害、土砂崩れなどが毎年のように起 こっているため、様々な分野において危機管理の必要性が改めて顕在化し、社会的にも総合的な危機管理 の重要性が認識されてきました。

今までの我が国における危機管理は、主として食品や金融業界などの企業不祥事に伴う対処や阪神淡路 大震災や三宅島噴火などの大規模災害に関する分野を中心にそれぞれの分野で単独に研究が進められてき ました。このような背景から日本における危機管理に関わる学会は、人文・社会系を中心として設立され、 活発な活動がなされています。一方、諸外国においては戦争における核攻撃や大量破壊兵器そしてテロリ ズム等の対策に重きがおかれ、幅広い分野に総合的に対応する危機管理が発展してきました。しかし近年 では、わが国においても医療を含めた生命科学分野や環境・理学・工学分野そして教育分野までも総合し た危機管理の必要性が叫ばれるようになりました。さらにそれらに関わる人材は研究者ばかりか小中高の 学校教員から社会人に至るまで多方面にわたっています。

千葉科学大学では、2004 年に我が国で最初の『危機管理学部』ならびに 2008 年には『大学院危機管理学 研究科修士課程および博士課程』を設立し、幅広い分野を対象とした危機管理学の構築とそれに対応でき る人材の育成を行ってきました。大学開設 12 年が経過し、博士(危機管理学)の学位を取得した修了生も 誕生し、また本学大学院修士課程の修了生ばかりか社会人対象(東京サテライト教室)の修士(危機管理 学)の学位を取得した者も多く輩出されました。その間に、東日本大震災はじめ大規模災害等における危 機管理対応に際しては、既存の人文・社会科学、教育、生命科学、理学・工学など専門分野の様々な学会 に所属し危機管理にあたる研究者や社会人が交流・議論することによって危機に対する判断を下すことが 行われてきました。しかしながら、これまで十分に機能したとは必ずしも言えない現状を鑑み、ここに『総 合危機管理学会』の設立を提起するものです。

本学会の目的は、危機管理学を1つの学術分野として独立させることにあります。緊急事態や災害等に 取り組むさまざまな専門分野の人々と、複雑なシステムを管理する業務に関わる学術分野として独立させ、 より高次の 危機管理者を育成するための教育および研究を総合的に展開できる「場」を提供することが求 められています。また、実務的な脈絡では、政治、行政、民間、メディア等すべてを、ばらばらに分散させ ておくのではなく、同一の枠組の中で統合し、調整するシステム、すなわちわが国の危機管理を推進する ための最重要課題を論理的に追求する学会と位置付けます。これにより、会員相互の資質の向上を図り、 安全で安心な社会、持続可能な社会を構築することに貢献します。より具体的には、人文・社会、生命科 学、理学・工学、教育などの分野において、人として最低限度身に付けなければならない共通の危機管理 とは何かを見いだし、それを学問として構築し、教育に取り入れたり、社会に還元することで国民の危機 管理に対する意識改革を目指すものです。このような次世代の人材が育成できれば、適材適所において脅 威となるリスクを見いだし、それを順位付けし、リスク評価から目標設定、そしてリスクに備えるための 実行計画を提案でき、社会に貢献できる人材になり得ると考えます。

この設立趣旨にご賛同いただき、文理融合の新たな総合科学領域「危機管理学」の確立、学術的研究お よび実践、応用、開発を願う個人・団体には、本学会にご入会いただきたくお願い申し上げます。